バレエシューズ

華やかな技より、地味なプリエが一番難しかった

子供の頃から、バレエを習いたかった。でも叶わなかった。そのまま大人になって、30代になってもその気持ちは消えなかった。「今さら」「経験ゼロで恥ずかしい」——そう思いながら、それでも教室のドアを開けた日のことを書こうと思う。


なぜ30代まで踏み出せなかったのか

幼い頃、バレエを習いたいと思っていた。でも何かの事情で叶わなかった。それきり「バレエは子供のもの」「プロを目指す人のもの」という思い込みが、ずっと心の中にあった。

30代になっても憧れは消えなかったけれど、壁はむしろ高くなっていた。歳を重ねるほど、「始めるなら早いうちに」という言葉が重くのしかかってくる。周りはみんな小さい頃から習っているはず。柔らかい体も、染みついた所作も、もう取り返しがつかない。経験ゼロの自分が今さら行ったら、浮いてしまうんじゃないか。笑われるんじゃないか。

やりたい気持ちと、恥ずかしさと。その二つが心の中でずっと綱引きをしていた。そういう気後れが、長い間一歩を踏み出せない理由だった。


初めてのレッスン、正直どうだったか

実際に教室に行くまで、何度もためらった。スタジオの前まで行って、引き返したこともあったかもしれない。

でも扉を開けてみたら、思っていたのと少し違った。大人から始めた人が、ちゃんといた。私と同じように、緊張した顔で隅に立っている人もいた。先生は経験ゼロの生徒に慣れていて、「できなくて当然」という空気があった。居場所がないと思っていたのに、意外とそうでもなかった。

最初のレッスンは、正直何をやっているのかよくわからなかった。先生の言葉も、フランス語まじりの動きの名前も、ほとんど耳を通り抜けていく。鏡の中の自分は、手も足もちぐはぐで、思い描いていた優雅さとはほど遠かった。それでも、来てよかったと思いながら帰った。体は重いのに、心は妙に軽かった。


最初の壁はプリエだった——そして今も

膝を曲げて、また伸ばす。それだけの動きだ。

なのに、できない。

始めたばかりの頃は「慣れれば動けるようになる」と思っていた。でも何ヶ月経っても、何年経っても、プリエは難しいままだ。むしろ続けるほどに、「まだここが違う」「もっとここを使えるはずだ」という感覚が増えていく。

できるようになるのではなく、どんどん深くなっていく。

それがバレエの基礎というものだと、今は思っている。地味に見えるバーレッスンの一つひとつが、実は全部つながっている。プリエがあって、アンバがあって、ピルエットがある。膝をやわらかく使えなければ、跳ぶことも回ることもできない。華やかな技の土台は、永遠に繰り返すシンプルな動きの中にある。

だから今は、できないことを焦らなくなった。むしろ、いつまでも難しいものが残っているということが、続ける理由になっている。ゴールがないからこそ、何年でも通えるのだと思う。


気後れしているあなたへ

年齢は、思っているほど壁じゃない。経験ゼロも、思っているほど恥ずかしくない。

教室には、同じように大人から始めた人がいる。先生は、初めての人を迎えることに慣れている。あなたが感じている「今さら感」は、扉を開けた瞬間にほとんど消える。

「いつか始めよう」と思っているなら、今日が一番若い日だ。


よくある質問

Q. 大人からバレエを始めるのに、年齢制限はありますか?

明確な制限はありません。大人向けクラスを設けている教室は多く、30代・40代・50代から始める方も珍しくありません。

Q. 経験ゼロでバレエ教室に行っても大丈夫ですか?

大丈夫です。大人向けクラスは経験ゼロを前提にしているところがほとんどです。「初心者歓迎」と明記している教室を選ぶと安心です。

Q. バレエの基礎レッスンでは何をするの?

バーに手をついて行う「バーレッスン」から始まります。プリエ、ルルヴェ、タンジュなど、基本の動きをひとつずつ練習します。

Q. プリエとはどんな動きですか?

両足の膝を外側に向けて曲げ、また伸ばす動きです。シンプルに見えますが、バレエ全ての動きの土台となる最重要の基礎です。

Q. 大人バレエと子供バレエの違いは何ですか?

大人クラスはプロを目指すためではなく、楽しむこと・体を使うことを目的にしています。発表会への参加が任意だったり、無理のないペースで進められるクラスが多いです。