ホテルニューオータニの、裏千家「初心者のための茶道教室」に通いはじめたのが、はじめてお茶に触れた日だった。
この教室、すごい人気で、申し込みは年に2回。人気のお教室はすぐ埋まってしまうらしい。私が通っていたころも、キャンセル待ちが出ていた。
きっかけは、小さな好奇心。
優しくて、深い、静かな世界がそこにあった。
道具にふれたのも、勿論ここが生まれて初めて。茶道具の静けさに、とても心惹かれた。
お茶を始めたばかりのころは、道具なんて何が何だかわからなかった。先生が「棗(なつめ)」と言っても「?」だったし、茶杓(ちゃしゃく)と聞いても頭の中で形が浮かばなかった。
数年経った今は、「あの棗、かわいいな」「この茶杓の削り方が好きだ」と言えるようになってきた。少しずつわかってきた気がして、それが嬉しい。
棗の話
棗は抹茶を入れる蓋付きの容器で、柿の形に似た丸いフォルムが特徴的だ。定番の形は利休形中棗。一般的なサイズと形だけど、季節の花や、虫、風景の写しが施してあって、蒔絵が繊細でホントにキレイ。
好みの絵柄は普通だけど、やっぱり菊とか、桜の柄は鉄板で外せない。
道具は使われてこそ、という言葉を大切にする。そして季節ごとの写しの棗は一年のうち、一回しか登場しないとか、干支の柄物なんかは12年に1回しか箱から出してもらえないというものもあって、なかなか矛盾している。
キャラ縛りのツワモノもいる
わたしはちょっと保守的なタイプで、古典的なお道具にトキメく。でも、アニメの写しを愛でるタイプの方も一定数いて、色々なキャラクターのものも結構ある。そのキャラ縛りで、お道具から着物まで揃えるツワモノもいるとか。
だから、古めかしい、面倒臭い、偏屈よりの趣味と思ってる方は、ちょっと覗いてみたらびっくりされるのでは?
海外のお土産や、民芸品のようなケースを、見立てと称してお披露目することもよくある。正式な格の高いお点前でなければ、普段はそうやってお道具を楽しむのもお茶の醍醐味。
茶杓という世界
茶杓は竹を削って作られた小さなさじで、抹茶をすくうためのものだ。これだけ聞くと「ただの道具」に聞こえるかもしれないが、実はお茶の世界で最も奥が深い道具のひとつだと言われている。
銘(めい)がついているものが多くて、季節柄「天の川」「初蝉」「稲の波」——そのひとことがすでに詩のようだ。茶人が自ら削って銘をつけた茶杓は、そのまま作者の言葉になる。
私は「好日」っていう、あんまり季節に関係ない銘のものを使うことが多いかな。
やっぱり茶碗
お稽古で先生が出してくださる古い茶碗の手触りは、新品とはまったく違う温かみがある。
私が好きなのは——やはり手にしっくり来るもの。大きすぎず小さすぎず、口があたる部分の感触が気持ちいいもの。素朴な萩焼や、三島に目が止まる。
だけど茶事や茶会には、触って良いのかと思うような豪華な柄が施してあったり、名物のマジでトンデモナイ一品が登場したりすることもある。恐れ多いので、所持したいという欲求は全く無い。
お茶碗を、両肘を畳につけて拝見する様は、何だか心地の良い所作だと思う。
丁寧に、大切に、扱うことが一番に合うのが、やっぱり茶碗。
書いてみたら、結構奥深くて、軽率に扱えないテーマだった。
よくある質問
Q. 茶道を習う際、道具は自分で用意するのですか?
最初のうちは教室や先生のものを使わせていただけることがほとんどです。好きなものをただもとめるのが、最も普通です。私は亡き師匠から分けて頂いたいくつかの茶碗が、思い出と共に手もとにあります。だから、結局先生が好きだったお茶碗が、私も好き。
Q. 茶碗などの道具はどこで買えますか?
茶道具専門店のほか、デパートの茶道具売り場でも購入できます。先生に紹介していただくのが品質面でも安心です。